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こんな見た目じゃ仕方がない。
シーリングスタンプは珍しい物だ。ボールペンや消しゴムとかと違って数は少ない。
強引だが、全部を買うこともやぶさかではない。
店の奥にそれらしい物が固まっているコーナーを見つけた。
これを全部買えば、正解があるはずだ。
「少年、シーリングスタンプも酒やタバコと一緒でピンキリだぞ」
「ん?」
「高いものだと学生が買える様なものじゃない。全部買うのは厳しいと思うけど?」
「ウソには騙されない」
「……何故そう思うのかい?」
「俺のようなこんな見た目の学生でも耳に入る情報だからだ。そのことから推測できるのは、ラブシーリングスタンプは学生でも買える値段の代物ってことだ」
「正解。だけど、君のような学生からラブシーリングスタンプという単語が出てくるだけでお姉さんは今夜の酒が美味く飲めそうだ」
スタンプさんのからかいを無視し、件のラブシーリングスタンプを探す。
見た目や色、形や大きさ等の該当する情報は誰も知らない。
『使うと両想いになれる』
『学生でも変える手ごろな値段』
『この店でしか買えない』
この三つしか情報はない。
正直、すぐに見つかるだろうと思ったが、その考えは甘かったようだ。
全然見つからない。
特徴的なものは見つからず、どれも同じに見える。
「随分と必死だけど、なんでそこまで頑張るのさ?」
必死、という言葉が俺の心に響いた。
「そんなに必死に見えるか?」
「あぁ、親の仇かっていうぐらいにね」
「その例えはよく分からないが、焦っていたのは事実だ……少し、落ち着こう」
深く深呼吸し、意識を切り替える。
無闇に探すよりも、ちゃんとした情報を聞き出した方が早い。
「少年、そもそも君はシーリングスタンプがどんな物か知っているのかい?」
「し、知ってるぞ。バカにするなよ、これだろ。何か変な棒が付いてる……」
商品の一つを指差す。
「そうだけど。用途は分かってる? まさか、どういう物か知らないわけじゃないだろう?」
「実際にやったことはないけど。暖めた蝋を手紙にたらして、こうスタンプてポンってやるやつだろ?」
「及第点ってところかな。しかし、そこまで知っているならラブシーリングスタンプに拘る必要はないんじゃないか?」
「ダメだ。それじゃあダメなんだ……使うと絶対に恋が叶うラブシーリングスタンプじゃないと……」
「ハハァーン、分かったぞ、少年」
「な、何が?」
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