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噂の真相
やっぱり、バカにされている気がするが、今は無視しよう。
口を挟むと無駄な時間が増える。
「実は噂のラブシーリングスタンプ、アレって嘘なんだ」
「ウソぉ!?」
「おっと、話は最後まで聞いておくれよ。正確に言うとラブシーリングスタンプを使うと両想いになれるというのは真っ赤なウソ。本当に効果があるのはコッチさ」
ヒラヒラとスタンプさんは上質そうな紙を見せる。
「この手紙が使うと両想いになれるのさ。ラブシーリングスタンプはこいつに付いているオマケさ」
「どうして、そんな回りくどいことを?」
正直、意味が分からない。
こんな事をするよりも手紙の方が気軽に出せるし、買う方もラクだ。
それに手紙の方がいっぱい売れると思う。
「うーん、少年には興味のない話になるけど。見ての通り、儲かっているとはお世辞でも言えないだろう?」
ぐるりと店内をゆっくりと見渡す。
薄暗い店内。
ホコリのかぶった道具。
色褪せたポスター。
「確かに、言えないなー」
「ハッキリと言われると、結構心にくるが……事実なので受けとめよう。お姉さんは分別のできる大人だからね」
言葉は力強いが、スタンプさんは机に突っ伏して、身悶えしている。
もしかしたら泣いているのかもしれない。
「とにかく、私は一策を投じたのさ。他の店と差別化をしようってね」
ヨイショとスタンプさんはレジの裏からドンと大きな箱を置いた。
「そこで白羽の矢が立ったのはシーリングスタンプさ。自分でもいうのも悲しいけど、かなり在庫も残っていたしね」
中を見ると、何かの模様が刻印されたスタンプが数種類と赤い色が付いた棒のようなものが入っている。
「細かい説明は省くけど、これらがシーリングスタンプのセットさ」
「……で?」
「早く先に進めろと威圧感が怖いけど、私はめげずに頑張るよ!」
スタンプさんは無駄な行動が多い人と、俺は覚えた。
「少年が言った通り、手紙の方が正直安くて手軽だ。そもそも最近の若い子たちはアプリを使って友達と連絡をとるから、手紙なんか出さないだろう?」
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