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生き物のような唸り声をあげる強風、容赦なく打ちつけてくる雨、今日の町は大荒れの嵐に見舞われていた。
8歳の少年・ミゲルは夜の家で一人父親の帰りを待っていた。
父親は水防団に入っているので、川に土嚢を積みに行っている。
風で窓がガタガタと揺れ、屋根がミシミシ音を立てるたび、家が吹き飛んでしまうのではないか、という恐怖に襲われた。
暗い部屋の中、テーブルの上に置かれたランプのロウソクの火を、ミゲルはじっと見つめていた。
父親は大丈夫だろうか。風で飛ばされたり、川の水に流されたりしていないだろうか。
不安で胸が押し潰されそうだった。
こんなとき、1年前、病気で死んでしまった母さんが生きていたら、膝にぎゅっと抱きついたりして、安心できたかもしれない。
幼い頃に死んでしまった、5つ歳上の姉が生きていたら、怖いねなんて体を寄せ合いながら、温かいミルクを飲んで、眠れたかもしれない。
ミゲルは、ソファに置いている白い大きなクマのぬいぐるみを抱きしめた。母親が幼い頃に買ってくれた宝物だ。
寂しい夜も、このクマを抱きしめれば、少し気持ちが和らぐのだ。
クマのふかふかした柔らかさに、ミゲルは涙が出そうになった。
その時、ドアの呼び鈴が鳴った。
「!父さん…!!」
ミゲルが急いで扉を開けると、そこにはずぶ濡れの白いローブを着た少女が、微笑みを讃えながら立っていた。
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