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「ごめんください…突然の訪問、申し訳ありません。
少し、雨宿りをさせて頂けないでしょうか…?」
ミゲルはとても驚いた。
少女がこんな酷い嵐の中に立っていたことにもだが、死んだ母親に似ていたのだ。
「ど、どうぞ…」
ミゲルは自然と、少女を招き入れていた。
「お心遣い、大変感謝いたします。
私はマリーと申します。あなたは?」
「…ミゲル」
「ミゲル。良い名前ですね」
テーブルの向かい側に座るマリーが微笑む。
マリーは少し歳上だろうか。
まだあどけなさは少し残るが、大人びた落ち着きを持つ少女だった。
姉が生きていたら、マリーと同じくらいの年頃の少女だっただろうか。
マリーは常に微笑みを絶やさず、慈愛に充ちた眼差しを向けている。
見れば見るほど母に似ているので、ミゲルはじっとマリーを見てしまう。
「?なにか、私の顔についていますか?」
はっと我に返ったミゲルはぶんぶんと首を横に振った。
ミルク鍋が沸騰する音がしたので、慌ててキッチンへ向かう。
ホットミルクをマグカップに注ぐ。
ミゲルの緑色のマグと、母が使っていた花柄のマグ。
「まあ、ありがとうございます。ホットミルク、わたし好きです」
「…ぼくは、はちみつを入れるのが好き」
「はちみつ、おいしそうですね」
「少し入れてみなよ。甘くておいしいよ」
ホットミルクが身体の内部を流れて、芯から温めていく感覚に、少しほっとする。
いや、ほっとしているのは、きっと誰かが一緒にいてくれているからだ。
「本当。甘くて、すごくおいしい」
マリーのにこにことした笑顔に、ミゲルも思わず顔が綻んだ。
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