夏影の帳。

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「そうね……でも想太くん、私はお父さんに会えるわ……私もお父さんのいるところにいくのだから。 だからね、想太くん、泣かないで……」 優しく彼女の手が僕の頬を撫でる。 「でも……」 俯く僕に彼女がそっと 煙管と空の小瓶を差し出す 「出来れば、チンクアンタの花みてみたかったなぁ。 少し残念。 でも、私はこれでいいの。 ねぇ、想太くん、お願いがあるの。50年前の花の蜜漬けが必要だから私のこの蜜漬けは使えないけど 明日咲くあの花の花びらをこの小瓶に入れて蜜漬けにしてこの煙管と一緒に大切に50年後まで守り抜いて……そしてその時がきたらあなたが会いたい人に会って。 お姉さんからの最期の約束……いい?」 もう言葉を発するのもギリギリなのにお姉さんは最後に僕に全てを託してくれた。 僕は涙を必死に拭いぐちゃぐちゃになった顔を上げ無理矢理笑い答えた 「うんっ!必ず……その約束守るよ……」 その言葉を聞いた彼女は満足そうに眠りについた。
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