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「響ちゃん…俺は…」
離せと、苦しい〜!
このぉー酔っ払いッ!と
俺の胸板をビシバシ叩く君に
長年の気持ちを伝えようとするも……。
「ごめん!西村ッ」
俺の言葉遮って……
聴きたくなかった
認めたくなかった
わかっている現実を
この耳に聴かされる。
「それとね。
私…好きな人以外に
抱きしめられるのも、いやなの…
だから…離して!」
潤みがちな大きな黒い瞳が
俺を見つめ、そう訴える。
思わず緩む腕…
するりと君はすり抜けて…
「西村ッ!女の子って…お前が思うほど
強くないの…
そんなに強く抱きしめられたら…
ちょっと…つらいよ」
ちと眉潜め…そう言って
「もし…好きな人…また現れたら…
今度は、優しくね♪」
ふわっと微笑んで…
アスファルトにヒール鳴らしながら
スカート翻して、俺から離れていく。
「明日から…リフレッシュ休暇で
彼と一緒に…ふふっ♪京都なの♪」
俺の気持ちを知ったはずなのに
なんで……君はトドメを刺す?
そんなにも笑顔で、俺を見る?
「またね〜!秋季大会でねぇ〜!」
明るくそう言って
背中を向ける君
ふわりと光と緑の様な香り残して
「…ほらぁ〜西村さんッ!
言ったじゃないですかぁ〜!」
遠くなっていくその小さな背中
それを見つめている俺に…
後輩の早川が言うけれど…
春季大会で…当たり前だけど
長身の茶髪のひとつ上の男…
試合以外はべったりな二人
99.9%…そうだと思うけど…
ただの仲良しこよしと思う
昔のガキの頃の俺と君とのように…
0.1%の望み…
それに賭けた一世一代の告白…
そりゃ…わかっていたけどさ…
幼なじみは幼なじみのまま
愛し合う男女の関係には…
俺と君はなれない、ということ
わかっていたけどさ…。
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