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バタバタと廊下の方から数人走って来る音がした。それに構うことなく私と玲莱は見つめ合っていた。
否、玲莱は私を睨みつけている。かと思うとざまあみろとでも言うかのように口端を上げて笑った。
「大丈夫か!?」
男子生徒が玲莱に駆け寄りそう言った。
それから数人遅れてやってくる。廊下からやってきたのは男子生徒六人だった。
「大丈夫、だいじょ……っ……」
突然泣き始めた玲莱に、周りは驚く。
それは私も一緒だった。
「どっか痛いのか!?」
慌てる男子生徒に玲莱は小さく頷く。そして間一髪入れずに言った。
「大丈夫!突き飛ばされて尻もちついちゃった所がちょっと痛いだけだから……!」
弱々しくそう笑った玲莱を見て、男子生徒達は私に振り向き強く睨みつける。
その視線に私は思わず身震いした。怖くて足がすくむ。
「お前、なんで突き飛ばしたりしたんだよ」
冷たく言い放たれた言葉が静かな空間に響く。
この場から逃げ出したくてしょうがなかった。
「私が悪いの!仲直りしたいって言った私が……!」
涙声で必死にそう言う玲莱は一体どういうつもりなんだろうか。
「だから、だからっ!瑛茉を責めないで……」
心がはらはらと崩れ落ちて行く感覚がする。
抜け殻のようにスカスカになってしまっていたそれがくしゃりと潰されてしまうような、そんな感覚。
男子生徒達はそんな玲莱を気遣いなだめる。
私はただそれを見つめることしかできなかった。
……こんな茶番、もう嫌だ。
もう、楽になりたい。
玲莱の言葉にまだ納得が言っていない様子の男子生徒達だったが、玲莱を気遣ってかその場を立ち去ろうとする。
玲莱を連れ立ち上がった男子生徒達は一様に私を睨みつけて、その場を去っていく。立ち去る間際、玲莱は僅かにほくそ笑んでいた。
姿が見えなくなるまで私はその背中を見つめた。見えなくなった瞬間、足の力が抜けてその場に座り込む。その時、忘れかけていた足首の痛みがまたやってきた。
夕日は先程よりも沈んでいた。
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