1. 現世の私 (続き)

8/15
前へ
/47ページ
次へ
座り込んでしまった足に力を入れる。 こんなところでぼーっとしている暇はない。このままここに入れば、また玲莱達に遭遇してしまう。それだけはやはり、避けたかった。 もうあの視線を受けられるほど、私は強くない。その証拠に足が少し震えていた。 捻った足がまだ痛む。けれどその痛みを無視して私は歩き出した。 歩くのにいつもよりもだいぶ時間がかかる。それでもテーピングのおかげか、朝よりは幾分か早い気がした。 家まであと少し、あの角を曲がれば着く。帰りたくない家でも今日は何故だが早く帰りたかった。 後ろから誰かが近づく足音がする。 一人、ではなかった。複数の足音。気配。 嫌な予感がした。早く歩き出したくても足が痛んで思うように歩けない。 怖い……っ 悪意をはらんだ気配に体が強張る。 「おい」 冷たい男の声に思わず立ち止まってしまった。 周りを男達に囲まれる。目に入ったのは、見慣れた制服だった。恐る恐る顔を見ると、それは先程の男子生徒達だった。 侮蔑や非難の視線を向けられ更に足がすくむ。 地面に縫い付けられたようにそこから身動きが取れなかった。 体が震える。悪意あるその雰囲気がとてつもなく怖い。 後ろから羽交い締めにされ頭を殴られた。 揺れた脳内に一瞬吐きそうになる。殴られた場所が悪かったのか意識がぼやけて行くのを感じた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加