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2.前世の私
「エマ様。朝でごさいますよ」
優しいその声色に、意識が浮上する。
瞼を薄っすら開けると入る眩しい光に、思わずまた閉じてしまった。
「ふふっ、朝食に遅れてしまいますよ」
きっとそんな私を見ていたのであろう、声の主が穏やかに笑ってそう言う。
素直に瞼を開けると、声色と同様に穏やかに笑った女性がこちらを見ていた。
「おはようございます。エマ様、今日はとても良い天気でございますよ」
夢のような光景に思わず目の前が滲んでいく。
体の思うままに起き上がり、目の前の女性に飛び付き抱き締めた。
「シンシアっ……」
急に泣き出した私に、彼女は驚いていたけれど。すぐに私を抱き締め返して、背中を撫でた。
「どうされたのですか。シンシアですよ、エマ様。貴女のシンシアですよ」
母のように暖かいシンシアのその体温が、これは現実なのだと私に教えてくれた。
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