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私に対する批判は、どちらにせよ消えることなんてない。それなら今更、気にする事もない。
「ちょっと!何もそこまで冷たくすることないんじゃないの!?」
手を振り払われたあの子は悲しそうな目で私を見る。そんなあの子に寄り添うように、あの子の友人達が次々に私に向かってそう言った。
「いいの!大丈夫、大丈夫だから!」
必死に私を庇おうとするあの子は、きっと傍から見たら本当に優しい子に見えるだろう。
けど、大丈夫って何が?何の意味も無くただその言葉を無責任に言った、なんてこと少し考えれば気付く筈なのに。
誰もあの子の矛盾に、違和感に気付いてくれない。あの子は私がどれだけ罵られても、わざと止めるフリをするだけで、否定なんて一切したことなんてない。
チグハグなあの子に、誰も気付かないでいる。
私は黙って立ち上がった。そんな私を見て周りは話すのを止め、私に視線を向ける。
「もう、いいから」
ぽつりと口から出た言葉は思ったよりも小さく、けれど静まり返った廊下にはよく響いた。
それがあの子に向けてなのか、自分自身に向けてなのか、はたまた別の誰かなのか。誰に向けて言ったのかは自分でも定かではなかった。
けれど、間違ったとも思わなかった。
生徒達は黙って私を見つめる。あの子も同様だった。無表情で、私を見る。
その場を立ち去ろうと歩き出した私の足は僅かに震えていた。周りの視線が、表情が雰囲気が、とてつもなく怖かった。
擦りむいた右腕がヒリヒリと痛む。けれどそんな痛みを気にするほど、心に余裕はなかった。
「これ以上、玲莱の優しさに甘えないでよ!!」
誰かが私の背に向かってそう叫んだ。
それを合図かのように、周りが口々に私を否定する。その言葉に思わず立ち止まってしまいそうだった。けれど、立ち止まったら崩れてしまいそうで。もう二度と、立てなくなりそうで。怖くて必死に歩いた。
私がいつ、あの子に甘えたんだ。
そんなこと、今までもこれから先も絶対にありえないのに。
聞こえる声に思わず、耳を塞いで仕舞いたかった。私はその場から逃げ出した。
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