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1. 現世の私 (続き)
あれから、どうやって帰ったのかあまりよく覚えていない。心半ばでいたように思う。
屋根裏に位置するこの部屋は相変わらず狭くて埃っぽい。それでも唯一好きなのは、目の前にあるこの少し大きめの窓だけだ。
眠れない。
ここ最近ずっと、眠れないままでいる。
今までだって別にぐっすり眠れていた訳じゃないけれど。ここまでじゃなかった。
窓枠に腰掛けて、見える月を眺めた。
あの日も、こんな満月だった。
不意に脳裏を掠めるフラッシュバックに思わず強く目を瞑った。膝を抱え顔をうずめる。
自分が震えているのがわかった。
「……もう、いやだ」
こんな日々はもう嫌だ。嫌なんだ。
あの日、あの瞬間から悪夢は始まって。
今も尚、悪夢は終わらずに私を責める。
ベットリと纏わり付く血の感触も、匂いも。
今も鮮明に覚えている。
……徐々に消えていく、大好きな人の体温も。
全部。私は覚えている。
あの日の全てが、私に絡みついて離れない。
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