1. 現世の私 (続き)

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あれからどれくらいの時間、こんな姿のままいたのだろうか。いつの間にか、夜が明けていた。 朝日が眩しく私を照らす。 学校へ行ったって家に居たって、対した変わりはないけれど。行かなかったら行かなかったで、玲莱はきっとまたおばさん達に言うことだろう。 それで何が待ち受けているのか、私はもう経験済みだ。どっちにしたって対して変わらないのなら、日常を変えるつもりはない。 いつものように制服に袖を通した。 荷物の少ないスクールバッグはいつもの如く軽くて、必要なものなんて対してない。 階段を降りる足が、いつもより重たく感じた。 「邪魔なんだけど」 冷たい声が、後ろから聞こえた。 思わず振り返る。そこには私と同じ制服を着た玲莱(れいら)がいた。 「聞いてんの。邪魔つってんの」 無表情で私にそう言う玲莱は、普段の様子からは想像できない程に冷酷に見えた。 「ほんと、目障りなんだよっお前!」 一言も答えなかった私を睨みつけて玲莱は私をまた突き落とした。 無抵抗の身体は激しい音を立てて階段を転げ落ちる。学校よりも段数の少ないそれは言うほど対したものではないけれど、落ちる瞬間に捻った足首が痛かった。 「玲莱っ!?」 落ちる音に慌てたようにリビングから飛び出してきたおばさん達は、玲莱の名前を心配しながら叫んでいた。 視界に玲莱を入れると、二人は安心したようにホッと息をついた。 「怪我してない?大丈夫?」 優しく玲莱に問う二人は私に話しかけることなく跨いで玲菜のもとへ行く。玲莱はそれに笑顔で答えていた。 「玲莱じゃなくて良かったわ。」
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