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三階から二階も調べたが、信者の寝室らしきものがあっただけで、久我さんの行方の手がかりになりそうなものは得られなかった。
一階へ伸びる階段をくだり終え、とうとう最後の部屋に到達した。
「ようやくこれで最後か。なんか暑くなってきてないか? 緊張してんのかな」
ケントは服の襟をパタパタとはためかせて扇いでいた。額には大粒の汗をかいている。
最後の部屋は食堂だった。ここも荒らされているようで、たくさんの食器が床を埋め尽くしていた。
ガサゴソと食器の海を掻き分けて目を凝らす。薄緑色のプレート、カラフルなプラスチックのスプーンやコップ。僅かなヒントも見逃すまいと床に這いつくばる。息があがる。頭がオーバーヒートしそうだ。
入念に探したが、やっぱり何も見つからなかった。
やっぱりダメか。一度家に帰って他の手段を考え直そう。
そう考えた途端、無限の暗闇に放り出されたような浮遊感に、胸を裂かれそうになった。……ここでは諦められない。見落としは無いか。部屋中をぐるりと見回しす。
食器棚、ダイニング、キッチン、食卓……
食卓の方向を見たところで、視線が吸い寄せられた。
食卓の下……
食卓にはテーブルクロスが敷かれていて、その下が見えないようになっていた。
食卓へと進み、その前でしゃがんだ。
黄ばんだテーブルクロスの端をつまむ。
「おい、その下も見るのかよ」
止めてくれと言いたげなケントの声を無視して、テーブルクロスをガバリとめくりあげた……
テーブルクロスの下には地下室の入り口があった。
「この下に何かある。食卓をどけるのを手伝ってくれ」
嫌がるケントを無理やり手伝わせ、地下室への入り口を顕にした。
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