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次の世界へ
夢の中の風景は、何時も穏やかな海だった。
緑の島が横たわる静かな海の波間に、僕の透明な体が浮かんでいる。
僕の生まれた空間だろうか、深い深い海底の光の無い音の無い、ずっと
ずっと果ての空間に、一人ぼっちの僕の姿が観えている。
明るくて楽しい世界なんて、始めから無かった。小さい時から今も、弱虫で
臆病者だった。虐め、罵り、虐待、此の世界では其れしか観えなかった。
臆病者の宿命なのかも知れないけど、嬉しくも楽しくも無かった。
何で、生まれてきたんだろう ?
何の為に、生きているんだろう ?
だけど今日から先、ほんの少しだけ、自由で楽しい空間が味わえる。
束の間で好い、此の世界で自分なりの至福の時間を過ごせたら、次は
眩い光りの世界が待っている ………
死から浮かび上がる魂が、闇に包まれた無限の空間を彷徨い続けて辿り
着くという、光の世界 ……
光輝が死後の空間を目指す理由は、単純だった。
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