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コンコンと叩く音がした。
光輝が本から顔を上げると、二人の警察官が立っていた。
光輝はビックリして、サイドガラスを開けた。
警察官が、覗き込んで来た。
「何をしているんですか?」
「ええっ、は、ハイ、ほ、本を読んで …… います」
光輝は緊張すると吃音になり、声も弱弱しくなる。
「車の中で、本ですか?」
「は、はい …… 」
若い警察官が不審顔で、車内を見回した。
後部座席に、大きなリュックサックと大きなバッグが並んで置かれている。
「大変な荷物ですね」
「ええっ、はい、旅行をしてい、います」
「旅行ですか?ちょっと、免許証を拝見させて貰っていいですか」
「は、はい … 」
光輝は、項垂れるようにペダルの上の自分の足元を観た。
年取った警察官が、免許証を光輝に返しながら。
「此処は駐車禁止ですから、なるべく早く、移動をお願いします」
「えっ、す、直ぐに … します …… 」
パトカーが車道に走り出して行った。
光輝は、車のエンジンを掛けた。
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