ヒガンバナ

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 和樹が死んだ。自殺だった。  奴と僕は幼馴染みで、幼い頃の殆どを一緒に過ごした。  周りの大人たちは兄弟のようだと言ったが、その実、僕らは兄弟処か正反対の人間だった。  性格も違ければ、容姿も違う。  それは、成長するにつれて顕著になっていった。  好奇心旺盛で活動的な和樹に、引っ込み思案で臆病な僕。  全てを器用にこなす和樹に、何につけても不器用な僕。  頭の良い方と悪い方。  顔の良い方と悪い方。  とにかく、何もかもが違っていた。  だが、不思議と和樹と僕は大きな仲違いをすることもなく幼少期を過ごしていた。  二人の間に、深い友情があった…とは思わない。  僕達の故郷は山あいにある小さな町で、住人の殆どは大人か年寄りだった。  山を切り開いて生活圏を広げてきた背景からか、先住民の仲間意識は強く、新参者に対しては排他的な態度をとる。  唯一、祭りやら商いで外部から来る連中には愛想良くしていたが、何かしら後ろ暗い盟約があったのだろう。  流石に僕らの世代の頃には、前世帯も少なくなり、新しい世帯も増えていたようだが、依然として人口は少なく、とりわけ子どもは数える程しかいなかった。  そうなれば、必然的に遊ぶ面子は決まってくる。  和樹とは性格が合わなくとも、そもそもの選択肢が僕にはなかったのだ。  小さな頃は、二人で色んな所へ行った。  山奥に秘密基地を作ったり、野原の草を掻き分け走り回ったり、神社裏の川で飛び込みをしたりと、町のほぼ全てで遊び抜いたと言っていい。  殆どは和樹が主導だった。  和樹は、興味を持った物に対して歯止めが効かない。危険なことも何度もしたし、大人達の言い付けも守らなかった。  今でも覚えている。  好奇心に満ちた、和樹の顔。  大きく見開かれた目に、にやついた笑顔。今思い出してみると、狂気にも近い熱が秘められていたように思う。  僕はといえば、そんな和樹に抵抗も出来ずにいつも振り回されていた。  嫌がる僕の手を引き、無理矢理引っ張っていく和樹。  それでもある程度までは楽しんでいたのは、やはり子どもだったからだろうか。  そんな僕達の関係が変わったのは、中学に上がった時だった。
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