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待ち合わせ
「僕」はその手紙を懐に大事に入れて、手紙に書いてある待ち合わせ場所に急いだ。
気持ちは先走った。
そこへ着くと有名な銅像の前に立った。
少し恥ずかしい気持ちになるが、此処が待ち合わせ場所だ。
走り書きのノートを破いたこの手紙には、こう書かれていた。
ーーいつか、あなたが20歳になった時。
こんな私に会いたいと思ってくれたなら、あなたの誕生日に、寅さんの銅像前で待ってます。
ただそれだけの手紙。
この三行が今まで僕の心の支えになっていた。
これを受け取ったのは、警察署から児童養護施設に行く前、躊躇いがちに一人の年配の婦警さんが近寄って来て、指を唇に当てて内緒ね、と呟いて手の中に入れてくれた。
その方には定年したと聞いてから会いに行った。
どうして渡してくれたのか…それを聞きたくて…。
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