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さようなら
玄関から倒れる様に出て、ズリズリと這い出た。
僕の倒れた拍子にドアがバン!と音を立てて、その音でおばちゃんが出て来た。
「拓人くん!!大丈夫?今、救急車呼ぶから…。」
僕はおばちゃんを引き止めた。
「救急車、来ても…すぐ帰って来る。やめて?おばちゃんにも会えなくなる。
おばちゃんに会いたいよ……。」
泣きながら僕は訴えた。
おばちゃんは少し考えてから、僕を部屋に抱えて入れた。
おばちゃんの布団に寝かされて、暖かくて良い匂いがした。
「拓人くん、おばちゃんね、もう引っ越すの。新しい仕事が決まってね?遠くに行くのよ。」
絶望って、こういうのを言うのかなと思えた。
涙が出て来た。
そんな僕を見ておばちゃんが言う。
「拓人くん、良く聞いてね?おばちゃんと来る?おばちゃんの子になる?贅沢はさせられないし、学校も無理だよ?でも家で勉強は出来るし、おばちゃんは拓人くんを傷付けない!心も体も…。ご飯も豪華じゃないけどお腹いっぱい食べていいよ?」
学校なんてどうでも良かった。
僕は行きたいと答えて、その2時間後にはおばちゃんと電車に乗っていた。
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