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現在
20歳になった。
夜間高校を卒業して、僕なりに色々調べた。
あの当時の新聞記事にも目を通した。
妹にも会えた。
祖母の葬儀で。
妹は僕の顔も知らず、ただ祖母から居なくなった兄がいると聞いていたらしく、妹は僕を抱きしめて何度も謝った。
「私だけ、ごめんなさい」と…。
それだけで妹が幸せだったと分かるから、僕は満足していた。
あの時の婦警さんから話を聞き、やっぱり会いたい気持ちは大きくなった。
そして待ち合わせの寅さん前に立っていた。
時間は分からない。
朝の7時にそこに着いて、ずっと夜までいる覚悟だった。
ーー「最初はね。ハチ公前って話してたの。時間が経っても変わらずにある物の前がいいでしょ?って…。でもね、彼女、ハチ公前は待ち合わせが多いし、若い子が多いからあなたがいる事に気付かなかったら申し訳ないって…。寅さん前なら人は少ないでしょ?待ち合わせする人は多くないから…。」
婦警さんは笑いながら教えてくれた。
僕が連れて行かれる寸前、窓から僕を見た母が婦警さんに頭を下げてお願いしたのだそうだ。
「もう二度と会えないかもしれない!お願いします!息子なんです!誰がどう言おうが、血が繋がってなかろうが…息子なんです!」
その言葉に婦警さんの心が動かされたらしい。
名前を書かないという条件でその三行の手紙を僕の手に握らせてくれたのだ。
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