第一幕.非解決役の破綻推理

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 一課に不穏な訪問者が現れた。  ――調子っ外れなソプラノのキンキン声が、室内全域に(こだま)した。谺というよりは、甲高く穿(うが)つ不協和音だ。  女の声。  それも漫画かライトノベルのような、間延びしたマイペースな呼びかけ。  徳憲は聞き覚えのある声色にタイピングの手を止めた。顔を上げると、同僚たちが徳憲を一様に覗き見ている。 「ご指名だぞ、徳憲」 「判っていますっ」  刑事の一人にからかわれて、徳憲は勢い良く立ち上がった。  椅子を蹴るように歩き出したため、非常にけたたましい。彼自身、苛立っている。  警視庁内で女性に呼ばれるなんて、そんなに珍しいか?  そう――珍しいのだ。  何だかんだで男所帯だから、どいつもこいつも女性に縁がない。警視庁の中で名指しされるなんて、どんな仲良しかと勘繰られてしまう。徳憲はそれが嫌だった。  デスクワークの最中に、邪魔しないでもらいたい。 「やっほー、忠志くーん」
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