第一幕.非解決役の破綻推理

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「んー? はるばる会いに来てやったのにー、その言い草はひどくなーい? あたしと同じ『忠』の字を持つ仲でしょー?」 「いや、字は関係ないでしょ」頭を押さえる徳憲。「忠岡さんの職場はここじゃなくて、()()()()でしょうに」  ここは警視庁本庁舎の捜査一課である。  東京都千代田区の桜田門(さくらだもん)前にそびえ立つ日本警察の総本山は、警視庁の他にもう一つ、背の高いビルが隣り合っている。  ――警察総合庁舎だ。 「忠岡さん、仕事サボって何しに来たんですか」 「えー? サボってないよー?」 「今まさに勤務時間中でしょうが、あなたの職場は! 警察総合庁舎の七階に本拠を構える『科捜研(かそうけん)』って!」  科捜研。  正式名、科学捜査研究所。  映画やドラマでも題材に使われることの多い、警視庁刑事部の附置機関である。総勢八〇名ほどで構成されており、事件解決に不可欠な科学的根拠を分析・鑑定する専門家集団としてすっかりお茶の間に定着した。
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