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噂されている。
徳憲は居たたまれなくなった。
記事では科捜研の心理係に所属する女性研究所員を集中的に取り上げる傍ら、彼女とともに犯人逮捕へ邁進する徳憲についても筆が割かれている。
(俺が特集されるのは二度目だな)
徳憲は以前も機関誌のインタビューを受けたことがあった。
彼はかつて年間検挙件数ナンバーワンの記録を打ち立てたホープだった。おかげで、ノンキャリアでありながら三十路前に警部補までスピード出世できたのだ。
その実績が高く評価され、現在は警視庁の捜査一課に抜擢されただけでなく、事件の捜査主任を担当するまでになった。
そんな彼を陰で支える内助の功――とは少々語弊があるが――科捜研の最新技術で証拠固めに勤しんだ忠岡悲呂という女傑が話題になるのは、当然の流れと言えよう。
「しかしまぁ……まるで別人だな、この写真」
エレベーターで七階に上がる途中、徳憲は改めて冊子を一瞥した。
巻頭特集の扉絵を飾る写真は、忠岡の全身像だ。
デスクからやや引いた位置で椅子に腰かけ、微笑んでいる。それだけでも普段とはかけ離れた愛想の良さだが、何より徳憲が目を剥いたのは、彼女がめかし込んでいる点だ。
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