第一幕.非解決役の破綻推理

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「はー? 勝手に事故とか断定しないでよー」  まさかの反論をされた。  徳憲はいよいよ頭を抱えてしまう。  勝手も何も、捜査主任の徳憲がそう結論を出した以上、事件性はないのだ。他人にとやかく言われる筋合いも、ない。  この女はどうかしている。どうにも気が抜けるし、要領を得ないし、調子が狂う。本当に科捜研のエリートなのか疑いたくなる。口調もラノベみたいだし。 「あたしが聞きたいのはー、死んだ容疑者(マルヨウ)に突き付けられた逮捕状のことよー」  逮捕状?  徳憲はまぶたをしばたたかせた。 「逮捕状って……私文書偽造の?」 「それそれー」黄ばんだ歯を見せて笑う忠岡。「あたしさー、院長は()()だと思うわー」  無実?  この女、()()をかばいやがった。  徳憲はますますわけが判らない。  確かに、二課によれば院長は罪を認めぬまま、屋上から転落したらしい。何度も「私は無実だ」と叫んでいたそうだが、単なる苦し紛れとも取れる。
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