第一幕.非解決役の破綻推理

11/66
前へ
/261ページ
次へ
「あたしさー、()()()()()()()()なのよねー」  …………。  …………。 「ええっ!?」  思いがけない出自だった。あまりの偶然にどう反応すべきか見当も付かない。 「あたしはおねーちゃんと二人きり、親が蒸発して孤児院に預けられたのー。おねーちゃんが就職してからは一緒に独立してー、あたしは大学院まで進学したわー。心理学博士号や臨床心理士や公認心理士を取得したときー、科捜研に引き抜かれたってわけー」  だから孤児院について聞きたがっていたのか。  理由もなしに、この女が会いに来るわけがないのだ。少なくとも色恋では断じてない。 「あたしたち姉妹を育ててくれた院長がー、横領なんかするはずないわー!」 「そう言われてもなぁ……その話は俺じゃなく、二課に尋ねた方が……」 「二課は駄目ー。院長の逮捕状をこしらえた大馬鹿どもよー? 信用できなーい」  感情で否定されても困る。  逮捕状が出たということは、よほど確実な証拠および犯罪に至る『ストーリー』が固まったことを意味するのだ。  それを今さら個人的な所感で覆せるわけがない、のだが――。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加