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臆面もなく忠岡が敵視したので、徳憲は大きくのけぞった。
その醜態に、同僚たちも何事かとこちらを注視する。恥ずかしい。
「忠岡さん!? さすがに今の発言は問題かと……英雄に対して何たる言い草!」
「そいつさー、孤児院の経理と知り合いなんでしょー?」
「はい。そこから内部情報を入手できたんですから、お手柄ですよ!」
「怪しーなー。実は経理が犯人じゃないのー? 英雄は知り合いをかばってるんだわ!」
「ないですよ! 伝説の英雄を疑うなんて正気ですか!?」
「あたしが必ず真実を暴いてやる! 院長の敵討ち! 弔い合戦よーっ!」
悲しいまでに支離滅裂な、悲壮な決意表明だった。
忠岡悲呂の『悲』もまた、悲壮の悲だ。親はよくこんな字を名付けたものだ。
彼女もまた、名は体を表しているらしかった。
やがて徳憲は、目の当たりにする――この漫画のように緩い心理係が、破天荒な手練手管をもってして、事件を引っくり返すさまを。
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