第一幕.非解決役の破綻推理

15/66
前へ
/261ページ
次へ
「で、俺にもそれを見せてくれるんですか?」 「にひひー、そのとーり」  総合庁舎の門をくぐる忠岡が、いつになく楽しげだ。  あたかも自宅に彼氏を招き入れるような笑顔は、どうにも背中がこそばゆい。 「忠志くんさー、今日はもー報告書を作って終わりでしょー? ならウチに来て見学してもいーんじゃなーい?」  なんてことを言われたので、つい興味本位で付いて来てしまった。  この女が何をするつもりなのか徳憲も純粋に気になったし、せっかくだから科捜研を覗いておくのも悪くない。 「ささ、遠慮せず上がってー」 「あなたの家じゃあるまいし……」 「半分くらい家みたいなもんよー。あたし泊まり込み三日目だしー」 「何しているんですか一体……」 「研究に熱中しちゃうとー、時間が経つのも忘れるのよねー。おかげで化粧も身だしなみもボロボロー」  そのせいなのか。  外見が今いち薄汚い理由は、ズボラな性分の他に仕事熱心すぎることも一因のようだ。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加