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人の目を気にせず、寝食を惜しんで研究にいそしむ職人気質。そこに一瞬、心意気と矜持を垣間見た気がして、徳憲は感心した。
彼も仕事一筋だからだ。
エレベーターで七階まで上がり、一歩踏み出せば科捜研のフロアである。
各科ごとに部屋が割り当てられ、中には最先端を行く科学捜査の分析機器やらスーパーコンピュータが設置されている。総勢八〇名の研究所員が白衣姿で行き交う別世界だ。
心理係を擁する『文書鑑定科』は、すぐそこにあった。
ドアを押し開ければ、各人のデスクがずらりと並べられている他、筆跡鑑定に必要な精密機械、レーザー照射機器、顕微鏡、印刷機材やインクを識別するデータベース、筆跡標本を始めとする資料の膨大な本棚などが見て取れる。
「おい忠岡! えらく長い休憩だったな?」
「う。管理官ー……」
声をかけたのは、文書鑑定科を率いる穂村憾十郎管理官だった。
科捜研の統率者は、全部で九人居る。所長を務める刑事部出身の警視と、それを補佐する副所長の理事官。その下に、各科を指揮する管理官が七人、名を連ねる。
第一法医科、第二法医科、物理科、第一化学科、第二化学科、文書鑑定科、多摩鑑識センターの七部署だ。
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