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「しかも男まで連れ込んどるじゃないか」
「いやーん、男だなんてそんなー」
忠岡が嬌声を挙げた。なぜ照れるのか徳憲にはさっぱり意味不明だ。
管理官は年かさの増した壮年男性で、頭に白いものが見受けられるロマンスグレーのナイスミドルだ。管理職なだけあって白衣は着ず、スーツ姿でデスクから腰を上げた。
「一課の徳憲くん、だったかな?」
「はい、お世話になっています」
徳憲は敬礼した。
階級が遥かに上であり、年齢も二回りほど高いのだから、かしこまるのは当たり前だ。
通常、科捜研への鑑定依頼(もしくは捜査現場への同伴を求める臨場要請)は、窓口である第一法医科で手続きする。そのため、なかなか各科へ立ち入ることは少ない。たまに顔を合わせると恐縮してしまう。
「忠岡さんって心理係ですよね? 文書鑑定科で筆跡鑑定とか判るんですか?」
「判んないよー」あっさり認める忠岡。「あたしの専門分野は犯罪心理学だからねー、二課の証拠品は手探り状態になっちゃうのは否めないわー」
「何だ忠岡、調べものか?」
管理官が眉目を大きく見開いた。
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