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徳憲は目を剥いた。
刺し傷――すなわち、刃物である。
事実だとしたら、とんでもない発見である。
「これ、検死も同じことを言っているんですか? 司法解剖も?」
「――――……」
こくこくと怖川が相槌を打つ。
何と言うことだ。徳憲は自分が勇み足を踏んでいた現実に身震いした。科捜研を警戒する余り、基本的な情報さえも見逃していたようだ。
もしかして、こうやって徳憲がドジを踏むのも忠岡の思惑通りなのか?
怯間が両手を候補に振り上げて、文節ごとに立ち位置を変えて叫ぶ。
「しかりッ! 死因そのものは頭部を殴られたことによる失血死だッたが、その前に刃物で後頭部を深々とぶッ刺されていたのだッ!」
「そうか……物理科は刃物・刀剣類の鑑定も引き受けていますから、刺し傷の分析もお手の物なんですね」
「しかりッ! すなわち植木鉢の打撲痕は、最初の刃物の傷をごまかすために後から何度も殴り付けた目くらましだッたのだッ! 我が左眼に眠りし邪眼の魔力を解放すれば、この程度のまやかしを看破することなどたやすいことだッた!」
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