第一幕.非解決役の破綻推理

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 管理官は証拠品を取りに行く最中、フロアも案内してくれた。  一見するとごちゃごちゃした区画だが、実は機能重視で整理されていることに気付く。 「まずはお馴染み、筆跡や印鑑の鑑定を行なう業務。次にインクや筆記用具、紙質の鑑定を行なう業務。三つ目は偽造通貨や印刷物、活字の検査を行なう業務。最後に、新たな鑑定技術の開発に励む研究業務だ」  科内の作業を語って聞かせる管理官は、非常に饒舌だ。  自宅の庭を散歩する感覚で、すれ違う所員らに手を振りつつ徳憲を連れ回した。  持ち場にかじりついて一日中、検査に明け暮れる――。  外を歩き回る捜査一課とは正反対だ。  徳憲に学者は務まらないとつくづく痛感した。 「院長を逮捕する決め手となった証拠は、一本の万年筆だった」  ついに管理官は、歩みを止めた。  目の前には『心理係』と銘打たれた区画が広がっていたが、そこには入らない。その手前、何やら物々しい箱型の分析機材に囲まれたデスクに体を向ける。  机上にはノートパソコンや分厚い資料、標本の他、複雑怪奇な顕微鏡やら照明器具やら試薬やら馬鹿でかい箱型のスキャナーやらが置かれていた。どれが何をするための道具なのか、門外漢の徳憲には皆目見当も付かない。
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