第四幕.英雄の最終決戦

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「確か才慥さんは、合い鍵を持っていた……いや、でも玄関で返したと言っていた……」 「実は()()()()()()()ンじゃねえか?」  慂沢が入れ知恵のように助言した。 「え?」 「だってそうだろ? 一度は返すとまくし立てたものの、口論が激化して追い出されたンだよな? つまり()()()()()()ンだよ! その時点ではまだ合い鍵を持ってたンだ!」 「そうか! 隣人も口論を聞いただけで、返す場面を見たわけじゃない……!」  誰も、合い鍵を返却する瞬間は目撃していない。  飽くまで「そういう会話を聞いただけ」で、実行されたとは限らないのだ。 「才慥さんはいったん自宅へ引き返した……自室に戻り、部屋の電気をつけ、テレビをつけて、ずっと室内にこもっていたというアリバイ工作をした?」 「うふふ~。才慥サンの在宅を証明できる人って、家に居た母親だけだもんね~?」もたれかかる愉本。「しかも本人の姿を見たわけじゃなくて~、部屋の明かりとテレビの物音で『室内に居る』と()()()()()()()だけ~」 「実はこっそり部屋を抜け出し、忤藤愬実さんのアパートへ引き返した!」  徳憲は新たなストーリーに巡り合った。  巡り合ってしまった。
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