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才慥は二度目の訪問に大型ボウイナイフを持ち出し、振られた屈辱を殺意に変えて、被害者の玄関を合い鍵で開けた。ベランダではなく、堂々と玄関から。
「才慥さんは玄関から押し入り、焼き上がったケーキの横を歩いた際に髪の毛が落ちた」
玄関を上がると、すぐ台所がある。
才慥はそこを歩き、ケーキを一瞥しながら怒りを募らせ、奥の寝室へ乗り込んだ。
「寝室でケーキが冷めるのを待っていた忤藤さんへ、ナイフを振り下ろす……その刺し傷の痕跡を隠そうとして、手近にあった植木鉢でさらに殴り付けた。指紋が残らないよう、手袋も付けていただろう。英川さんが手詰まりだったのも頷ける……」
徳憲の紡いだストーリーは、怯間からも賛同を得た。
「全ての犯行が終わッたあと、犯人が合い鍵を置いて帰れば、あたかも一度目の訪問で返却されたような状況がでッち上がッたわけかッ!」
本当は二度目の訪問で殺害したあと、合い鍵を置いて帰ったのだ。
これで全てのつじつまが合った。
「ところで愉本さん、悦地さんは一緒じゃないんですか?」
「ん~? 彼なら~、心理係のちんちくりんと話し込んでたわよ~? カノジョの敵討ちだから随分張り切って犯罪心理について尋ねてたわね~」
「ちんちくりん……って、忠岡さんのことか!」
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