第四幕.英雄の最終決戦

58/65
106人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
   終幕(エピローグ).カタストロフィ 「甥の慶介に続き、儂の息子までもが殺人犯にされてしもうた……」  英川雄慈は、心が折れた。  なす術なく連行される才慥を見送って以来、今にも朽ち果てて消滅しそうなほど途方に暮れていた。  身内を立て続けに逮捕され、信用さえも失った指紋の英雄――その抜け殻。  かつての栄光はどこへやら、威厳も権威も崩壊した砂上の楼閣が取った次の行動は、無気力による辞表の提出だった。  警察に彼の居場所はない。  ここに居ても、何の益もない――。 「英川さん!」  ――警視庁の入口で、徳憲は去り行く英雄を追いかけた。  老兵は死なず、ただ消え去るのみ。  荷物をまとめた英雄の背中は、寂寥と哀愁を漂わせた敗北者だ。定年退職を待たずして自主退職に追いやられた末路に、徳憲も悔し涙をにじませた。 「待って下さい英川さん! 何も辞表を出さなくたって……!」
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!