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「指紋の英雄とか偉そーな二つ名を持ってるけど、引退間近のボケ老人でしょーに!」
「おいおい……さすがに悪口が過ぎませんか?」
徳憲が顔をしかめるも、管理官は彼女の好きに喋らせている。
「内部告発した経理とー、指紋の英雄は知り合いなのよねー?」
「はい。親戚どうしで近所住まいだそうです」
「親戚! ふーん、いかにも身内びいきじゃなーい?」
忠岡の口が不気味に吊り上がった。
何かを悪だくみするような、童顔に似つかわしくない不穏な冷笑だ。
「どーも胡散臭いわねー」
臭いのは徹夜続きの忠岡の体臭だろ、と徳憲は思ったが、口には出さない。
忠岡が目の敵にしているのは間違いなく英川雄慈だ。英雄の指紋鑑定を逆転する秘策があるのだろうか?
「あの英雄はー、証拠を隠滅してるわねー」
「え!」
証拠隠滅とは大きく出た。
警察にあるまじき爆弾発言だ。それを鑑識課のベテランにあてつけるなんて、無礼どころではない。常軌を逸している。著しい侮辱だ。
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