第一幕.非解決役の破綻推理

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「万年筆はー、()()()()()()()()()()()()()()()んじゃないかなー?」 「は!?」 「真犯人の指紋もあったのに嘘をついたとかー、手袋の埃も故意に払い落としたとかー」  鑑識そのものを疑っているのだ、この女は。  たじろぐ徳憲の前で、はしたなく中指を立てる忠岡が実に漫画的だ。 「英雄は、()()()()()()をかばったのよー。親戚は経費を着服し、院長に濡れ衣を着せたんだわー! 英雄にも報酬を山分けすれば、口裏を合わせてくれるでしょー?」  禍々しいまでの邪推だ。  とんでもない『ストーリー』だった。  事件発生までの『ストーリー』を想定し、それに沿って証拠を集める……というのが警察の一般的な捜査方針である。  しかし、忠岡の『ストーリー』はあまりにも荒唐無稽だった。整合性が薄い。 「あのですね忠岡さん。仮にそうだとしたら、指紋の英雄は証拠を闇に葬ったことになりますから、あなたの説は立証できませんよ?」  根拠もなく勘繰った忠岡の方こそ糾弾されかねない。 「管理官も忠岡さんを止めて下さいよ。やっても時間の無駄ですよこれ」 「いやぁ、面白そうじゃないか」 「ええ~……?」
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