第一幕.非解決役の破綻推理

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   3.  忠岡の決意は強固だ。気持ちでは負けていない。  とはいえ、実現できるかどうかは甚だ疑問ではあった。 「あ、相手は百戦錬磨の『指紋の英雄』ですよ?」 「何よー忠志くん、ひょっとしてあたしを裏切るつもりー?」 「いや、裏切るも何も……俺は検挙数の記録を持つ身ですから、さらに上を行く英川さんは尊敬対象なんですよ。あんな偉大な人物が、証拠隠滅なんて考えられませんって」  万年筆には院長の指紋だけが残っていたという。  だとすれば、犯人は確実に手袋を着用していたことになる。  しかし、万年筆からは繊維質が一切見付からなかった……それはなぜか?  口を開いたのは管理官だった。 「英雄殿が事前に、経理の知念慶介から犯罪計画を持ちかけられたとすれば、初動捜査にかまけて証拠品を処置しておいた、か」 「それそれー!」上司を平然と指差す忠岡。「万年筆に付いた犯人の指紋をあえて無視した可能性もあるけどー、これは別の人が調べたら一発でバレちゃうから、ないわねー。犯人は手袋だった、その埃を飛ばしてから鑑識課が押収したのよー」
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