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「ま、待って下さいよ」
徳憲が割って入る。
両手でそれぞれ、忠岡と管理官の口元を塞ぐようにあてがった。
二人とも、恐れ多い仮説を前提に会話し過ぎだ。とても聞いて居られなかった。まるで天に唾を吐くような悪罵ではないか。
「管理官も忠岡さんも、万年筆だけこねくり回すから妄想だらけになるんです。他の証拠品はないんですか? 違う角度からメスを入れてみるのも大切ですよ!」
「んー、それもそーねー」
忠岡は机上のファイルをぱらぱらとめくった。
私文書偽造に関する科捜研の鑑定内容が全てプリントアウトされている。
デスクトップ・パソコンにもデータベースは保存されているが、紙で眺めた方が閲覧しやすい。
「これなんかどーお?」
忠岡が示したのは、領収書および請求書に関する鑑定結果だった。
どれもこれも、請求額が改竄されている。
現物はここにはないが、写真が撮られていた。本来の数字に線を追加し、請求金額を何倍にも膨れ上がらせたことは以前も伝えた通りだ。
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