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前述した高性能顕微鏡と赤外線照射で暴かなければ、孤児院の運営費が天文学的に増大し、国からの助成金をたんまりせしめられただろう。
「この鑑定にー、興味深い一文があるのよー」文面を指でなぞる忠岡。「本来の請求額をしたためた『筆圧』とー、犯人が追記した線の『筆圧』が異なるんだってさー」
「筆圧?」
徳憲は口をすぼませた。
筆圧とは、ペン先へ込められる力の強さだ。
だが、それが捜査において何を意味するのか、瞬時には理解できなかった。
管理官が見かねて助け舟を出してくれる。
「人によって筆圧は千差万別なのだよ。握力が弱い人は、自然と筆圧も低くなる。逆に、字を濃く書き残したい人は筆圧も高くなる、と言った案配だ」
「なるほど。筆圧が違えば、それは別人が別の時間帯に書いたと判断できるんですね」
「左様。紙に字を書くと、必ず紙面に跡が残る。筆圧による紙の凹み具合を科学的に数値化することで、どの文字が誰の手による筆記か判明するのだ」
「数値化なんて出来るんですね。それは俺も知りませんでした」
「コンピュータで分析するからな。これは『数値解析』と呼ばれる手法だ。紙に生じた微細な凹凸をスキャンすることで、凹みの深さを測定するのだ」
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