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「孤児院で聞き込みしたいのよー。科捜研も捜査本部から『臨場要請』を受ければ、現場に同伴できるでしょー? ほらほらー、早く要請してよー忠志くーん?」
「えっ、俺が要請?」
自分を指差す徳憲に、忠岡も指を突き付けて快活に頷いた。
捜査一課も事件に呼ばれた正式な部署だから、科捜研に捜査の立ち会いを頼めるのだ。
「急野院長の死を精査するという名目で、一課が心理係を連れて行けば良いんですか?」
「そーゆーこと!」バンバンと背中を叩く忠岡。「忠志くんはまだ報告書を提出してなかったわよねー? てことはまだ捜査を続行できるでしょー? ねーねー、お願ーい!」
*
徳憲は覆面パトカーで孤児院を再訪した。
もう解決済みだと思ったのに、なぜ何度も来なければいけないのか。
孤児院側も良い顔はしないだろう。事件当日の嫌な記憶を蒸し返されるのだから。
「わー、懐かしーなー」
助手席の忠岡が、シートベルトを外すのももどかしく意気揚々と降り立った。
孤児院の門前まで、薄汚れた白衣姿で歩み寄る。まるで不審者のようだ。
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