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「し、知り合い……!?」
職員と鑑識が旧知の仲だったとは。
その密告を元に、正式に警察が動いたのだ。だから鑑識員も逮捕に立ち会いたいと願い出たわけか。
「領収書にゃあ、院長さんの指紋が山ほど付着しとるからのう。改竄に用いたペンも、院内全ての筆記用具を押収して調べとる最中じゃ。じきに特定されるじゃろう」
「あ、あなたは一体……」
「警視庁刑事部鑑識課、現場指紋係にして指紋担当管理官――英川雄慈じゃ」
「ちょっと英川さん、主任の僕より目立たないで下さいよ!」
捜査主任が小脇からぼやく。
英川は老齢にも拘らず、背が高い。主任ですら頭が上がらないことから、階級も英川の方が上なのだろう。院長には細かい警察の役職なんか判りっこなかったが。
「この人はな、指紋鑑定一筋の大ベテランなんだぞ!」
主任が自慢げに吠えた。
お前が凄いわけでもなかろうに。虎の威を借りる狐そのものだ。
「この人に指紋を採られた日には、もはや言い逃れは出来ないぞ! 何しろ鑑識課における検挙件数が二〇年連続トップというお方だからな……人呼んで『指紋の英雄』だ!」
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