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「堂々と万年筆を借りたとは思えないからー、こっそりくすねて使用したあとに元の場所へ返却した……と考えるのが妥当よねー?」
「それを誰かが目撃していれば良いですね」
「目撃情報は期待してないわー。状況証拠が見付かれば充分よー」
「状況……ですか」
証拠としては弱くないかと思案する徳憲だったが、忠岡に言っても無駄だろう。
ほどなく受付係の淑女が玄関に現れた。不承不承と言った体で徳憲たちを招き入れる。
施設内は陰鬱としており、活気がなかった。職員たちは事件の処理に明け暮れ、院長亡きあとの経営をどうするのか途方に暮れている。どうにも辛気臭い。
「職員も、子供たちも皆、胸が張り裂ける思いです」
受付係が案内がてら吐露した。
廊下を渡り、職員室へと向かう。院長の席も職員室にあるそうなので、徳憲は一も二もなくそこを目指した。
院長のデスクは職員室の上座に位置し、職員用デスクとさほど離れていなかった。すなわち、本人が居ないときであれば、他人が机を物色することも可能である。
「あのー、知念慶介さんは居ますかー?」
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