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「げ」主任の渋面。「僕は一課じゃないから、人死には苦手なんだよな……おぇっ!」
「悠長なこと言うとる場合かのう?」
「そりゃ英川さんは変死体も見慣れてるんでしょうけど、僕は捜査二課ですよ。死体は一課の管轄じゃないですか。しかも容疑者を追い詰める過程で死なせたとなれば、僕のクビかなりマズイですよね?」
明らかな過失である。警察の責任は重大だ。
「始末書じゃ済まないのう。マスコミからも叩かれそうじゃ。査問にかけられて降格処分は免れまいて」
「で、でも、それを言ったら英川さんだって」
「責任者はお主じゃろ? 部下や付き添いまで責を問われることはあるまい」
「うわぁ……」
頭を抱える捜査主任に、英川は自嘲げに笑った。
そこに後悔の色はなかった。すでに何度も思い描いたような予定調和よろしく、指紋の英雄は屋上の風にそよがれた。
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