第一幕.非解決役の破綻推理

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 それだけに、二課がやらかした失態は辛い。彼らを反面教師にして、一層気を引き締めようと肝に銘じた。 「死体の状況は、二課が供述した通りだった……ゆえに事件性はないと判断し、捜査は終了した……っと」  忘れないうちに報告書の作成に取りかかる。  机上に置かれたノートパソコンで書式のテンプレートを開き、足下の扇風機を爪先で()けながら文章を入力した。  死亡した院長は警察病院へ収容され、近日中に遺族へ引き渡される手筈だ。きっと警視庁のお偉方が謝り倒すに違いない。記者会見も同時に開かれ、盛大に叩かれそうだ。  実にお粗末な顛末ではないか。  死者(ホトケ)の遺留品などは念のため回収したが、遠からず遺族へ返却されるだろう。  一件落着だ。  一課がやることは、何もない――。 「徳憲くーん、居るー?」  ――あった。
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