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第三幕.英雄の化けの皮
1.
『心理係に現れた超新星! 敏腕警部補との二人三脚で難事件の闇を照らし出す!』
そんな見出しがでかでかと誌面に綴られたら、徳憲忠志は赤面せずに居られない。
警視庁の職員に配布される機関誌が、まさにそれをやってくれた。
一般には出回らない内輪の冊子ではあるものの、表紙に大きく取り沙汰され、巻頭で何ページもの特集が組まれているとなると、徳憲は何も悪くないのに委縮してしまう。
身が引き締まる思い、とでも言うのだろうか……いや、多分違う。
(そもそも、記事の主役は俺じゃなくて、心理係の方だがな)
冒頭の『敏腕警部補』が徳憲のことだ。
そして『心理係』は――言うまでもあるまい。
徳憲は冊子を片手に、警察総合庁舎の七階を目指した。警視庁本舎にある刑事部捜査一課から隣のビルへ渡り歩くのだが、道中すれ違った同僚たちは漏れなく振り返り、指を差すのだった。
「あいつって機関誌に載ってた」
「徳憲だろ? 指紋の英雄をものともせず、新たな証拠を挙げる若手の逸材だとか」
「世代交代の波が来てるな」
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