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私、服飾関係のOL27歳。
彼氏いない歴27年。
ただいま、12歳年下の中学三年生の美少年から猛烈アプローチを受けております。
今日も美少年からメールが届く……
「今日着てた服可愛かったですね。どこで買ったんですか?」
「あれは友達からの貰い物なの。」
「僕の服、お姉さんに選んで欲しいなあ。」
「若い子の着る服なんてわからないよ。」
うん。私は服飾関係のOL……
自分で言うのもなんだけど、知識だってセンスだってあるよ?
でもそれを言ったら間違いなくデートに誘われてしまう。
もう一度目のような失態を繰り返すわけにはいかないのだ。
にしても……
さり気なく女性の服装を褒めるだなんて
この子本当に中学生?
……もうっ。
ある朝、いつものように最寄りの駅で美少年に会うと、すれ違いざまに手紙を渡されてしまった。
「明日の朝10時、この駅で待ってますっ。」
えっと思って振り向くと、美少年はイタズラっぽい笑みを浮かべて友達のいる方へと走っていった。
手紙の中には遊園地のチケットが一枚……
「……やられた。」
押しの強い美少年に断れず……
結局二回目のデートとなってしまった。
今度こそなんとかして諦めてもらわないと────
待ち合わせ場所に着くと美少年はもう待っていた。
私の姿を見てちょっとビックリした顔をしている。
私はいつもバッチり化粧して長い髪を巻いてスーツを着ている。
そんな年上女性、五割増しバージョンアップを今日はあえて封印し、ナチュラルメイクでジーパンというラフな格好できたのだ。
これで年上女性マジックが解けてくれればと思ったのだけど……
「どうしよう……かわいい。」
美少年がボソッと言う。
ばっちり聞こえちゃってるんですけどっ。
頬を赤らめる美少年。
こっちが照れるからやめてやめてっ。かわいすぎるから!
私の作戦は初パナからカウンターパンチで跳ね返えされてしまった。
「手って、握ったりとかします?」
美少年お得意のうんとしか答えられない質問。
「……します。」
「じゃあ手を繋ぎましょう。」
そう来るよね。
わかっていたよ、このパターン。
……………
いや、わかってなかった!!
美少年がしてきたのは恋人繋ぎだった。
あれよ、あれ!指を交互に絡めるあの繋ぎ方!
えっ知ってるって?!
いや、私初めてなんですけど─────!!
「お姉さん、名前ってあります?」
いや、あるだろっ!
やめてっ。恋人繋ぎでパニックになってる私に畳み掛けてこないでっ!
「メ、メールで教えたでしょ。」
「じゃあ行こうか、美和。」
まさかの呼び捨て────────?!
「年下のクセに生意気。」
言葉とは裏腹に顔がニヤける。
ダメだっ誰か私を後ろからしばいて下さいっ!
「……じゃあ、さん付けする。」
美少年が拗ねたようにぷっと頬を膨らませた。
なんだよそれっかわいすぎるだろ!
もたないっ、今日一日私もたないっ!!
美少年に連れて来られた遊園地は子供の頃に良く来たところだった。
「変わってない…懐かしい。」
……しまった。
以前メールで、遊園地は好きですか?と美少年から聞かれた。
デートに繋がる質問は断固阻止せねばと思った私は、乗り物酔いがひどいから行かないですと答えていたのだ……
「遊園地は好きですか?」
美少年は同じ質問をしてきた。
「……好きです。」
「やっぱり。」
バレバレだったよね。
そりゃそうよね。
映画館も動物園も水族館もスポーツも公園も全部行かないと答えてたんだから。
どんな人間だって感じだ……
美少年は遊園地でとてもはしゃいでいた。
そこは中学生って感じだった。
恋人繋ぎの手はずっと繋いだままだった。
歩いてる時はもちろん、乗り物にのる時もお金を払う時もご飯を食べる時もず───っと離さないの。
なんだろう……
離したら私がどっか行っちゃうと思ってるのかな?
繋いだままの手が
ちょっと切なく見えた───────
これ、トイレ行きたくなったらどしたらいい?
「次はこれにしましょう。」
美少年が指さしたのはお化け屋敷だった。
私、お化け屋敷だけはムリなんだ。
しかもこれ、歩いて進むやつでお化けも人がやってる超本格的なのじゃん……
頭の中ではムリムリムリムリと連発していたのだが、12歳も年上の女性がお化け屋敷が怖いなどとは言えず…入ってしまった。
冷静に、冷静に。
相手はただの人間。
お化けじゃないお化けじゃないと自分にひたすら言い聞かせた。
のだが最初に出てきたお化けに大絶叫してしまった。
やっぱムリだ!腰が抜けたっ!!
私のあまりの狼狽ぶりに呆れたのだろうか、美少年はずっと繋いでいた手を離した。
「怖いなら最初から言えばいいのに。」
そう言って私を後ろから抱え込むように包んでくれた。
「歩ける?」
「う…うん。」
美少年の体が私に密着している……
顔なんか私の頭のすぐ横だ。
お化けなんて目じゃないくらい心臓がバクバクしてきた。
今日はいつも履いてるピンヒールじゃなくてローファーだったから、美少年の背がとても高く感じられた。
背だけじゃない……
私を支える手だって、背中に当たる胸板だって……すごく頼もしい。
男の子、じゃなくて男なんだと…この時初めて思った。
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