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───育哉だと思っていた彼が、育哉じゃなかった。
その事実は私を恐怖の淵に突き落とすのに十分すぎた。
全身が、震える。
───確かに、不思議には思っていた。
3年で見違えるほどかっこ良くなった彼。
でも、成長期に身長がぐんと伸びることは普通だし、『イメチェンしたんだ』と笑う彼の言葉に、ただただ感嘆していた。
少女漫画でよく見る、久しぶりに会った男の子が別人のようにかっこ良くなって現れるお話。
まさかそんなことが現実に起きるとは思わなくて、けれど確かに自分自身に起きたことに。
───完全に、舞い上がっていた。
優しい声なんかで信用するんじゃなかった。
たかが泣き黒子があることで疑心を捨てるべきじゃなかった。
なんで、すんなり彼が《育哉》だと思ってしまったんだろう。
でも、記憶の中の育哉と、外見以外は全て合致したんだ。
彼の底無しの優しさは、記憶の中にいる育哉となんら変わりなかった。
手紙でのやり取りだって全部知ってて、そんな彼を疑うことなんて───
と、そこで私はある疑問に思い至る。
───手紙?
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