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「本当におじいさんだと思います!家にはいませんでした!」
僕はできる限り、声を広げて叫び出した。
「だったらいいんだ。みんな帰ろうぜ。どうせあのじじいは天女天女ってしか言わないし。みんながわざわざあの狂ってるやつなんかのために命を落とすなんて、しねえだろう。しかも硫黄山、危険だぜ。」
想定内にみんなが頷き始める。
「ひどすぎます!」
案の定、この人たちはやはり狂っているじじいしか思わない。
「あれ、あの人、見たことありませんが、誰かわかります?」
と後ろを指して、うそをついた。
「え?誰・・・」
みんなが首を回してみる。
「おえ!おまえ・・・」
飛び上がって一番近い人の松明を奪って硫黄山へ駆け出す。
「危険だぞ!戻れ!小僧・・・」
後ろから喚き声とともに追い詰めてくる人たちの足の運び声も聞こえた。しかしそれが届きようが届くまいが、僕はひたすらに走り続ける。
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