天女とおじいさん

9/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
 硫黄山の地域に踏み込むと、すごい硫黄(いおう)の匂いに包まれて花を塞ぎながら進む。そのほか、温度が里にいるより高くて夜の割には暖かい。道はでこぼこで、途中にいくつかの硫黄の(かたまり)が現れて転けそうにもなってしまった。手元の松明のおかげて正体を明かした塊が生んだ白い煙は(じょ)(じょ)に上がっていく。硫黄の塊の隣を通って走っていった後、ちょろりと(かえり)みてみると、走りに伴い、煙はさっと歪んで再び元の姿を取り戻そうとする。  「待て!戻れ!」  後ろから止まらない叫び声。  それを構わずに岩を登って、新たな登りの階段が現れる。何箇所は潰されたように欠けているが、全体的には階段と()()せるので、走って跳んで、やがて上の平地に着く。  「おえ!おまえ!」  少しでも休憩しようかと思ったが、声の(みなもと)が近づいてくる。止むを得ずに足を引きずって扉の前へ進む。しかし、振り返ってみれば、みんなは登っている。  松明を捨てて扉を全力で推したが、少ししか動かなかった。後ろを確認しながら、頑張って推すが、4センチメートルくらいの隙間が空いていて、中に入るのはダメだ。平地に着いたみんなの足元が近づいてくるのを意識し、体を横に捻ってその隙間に挟ませ、無理やりに横とした体を入れようとすると、扉がなんとか動いてくれて中に入った。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!