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思っているうちに、顔を上げると、セミロングの女性は何かを書いている。ペンの先が紙にあちこちと滑る音が拡大されたように、ここでは十分に聞こえてくる。これはまた被害者が出るなと思いながら、三角形を見張って目線をセミロングの女性に戻したが、どうやら音だと無事でいられるようだ。
セミロングの女性は文字の書き込んだ紙を胸先に上げて周りに示す。
「文字:今のは声帯!声を出すと、声帯が取られてしまう!」
全員に示した後、また何かを書いている。今度も書き終えてストレートヘアの男性へ向けて示す。ここからは良く見える。
「文字:ドアを開けてください!」
文字を見たストレートヘアの男性は頷いて取っ手を回した。「かざかざ」とドアから音が立つ。ストレートヘアの男性は諦めずに開けようと何度も試してみたが、無駄だった。
ストレートヘアの男性はセミロングの女性へ見返って、頭を横に振り続けていた。そのとき、「あ!」という叫び声がショートカットの女性から聞こえてきた。それに気づいた本人はすぐに口を覆って、自分の太ももを指していた。
とんぼがいつの間にかショートカットの女性のワンピースに止まっている。
しかし、視野の右側には光り始めた。頭を横へすると、その三角形の先にはまた白い雷の線が集まっている。
「やだ・・・」
ショートカットの女性は震える声で呟きながら、その集まりをじっと見ていた。
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