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神田川の架け橋で
神田川の架け橋を歩く二人がいた。二人は手を繋いで、男性はとうとうと足を止めた。それに気づいた女性は一度首を捻って男性の顔を見た。女性の視線からだと、男性の横顔。それと、遠ざかって咲き誇る立派な桜の木が枝を何気なく伸ばし、風に吹かれて上下して踊り続く。だが、桜は到底風に抵抗する術もなく、ぽたりと落ちていって、下の川に沈む。二人の目線は舞い落ちる桜の花にあった。
「やっぱり、桜って綺麗なんだね。」
女性は微笑みながら、男性の横顔を見て口を開けていた。
「うん。でも、桜は1週間しか持たない。」
男性はなぜか暗い顔をしていた。ただ舞い落ちり続く桜を目に焼き付けようとする。女性はそれを気づけた。
「どうしたの?体調悪い?」
「いや、別に。」
男性は女性を見ようとせず、繋いだ手も解けてしまった。
「あのさー・・・」
男性は顔を女性に向いて言いかけたが、結局は言葉を呑み込んでしまった。
「俺たち、もう終わりにしない?」
男性は手をフェンスに掴み、やっと口をなんとか動かして、ここに呼び出された女性に本音を言い出した。それはそうだが、男性が話した時は、女性の顔を見なかった。
「えっ?どうして?急に・・・」
女性はまごまごし始めた。
「私たち、ずっと仲良くやってきたんじゃな・・・」
「だから、もう無理だって!」
男性は悔しそうな顔を女性に向いて、一見すると怒っているようでも見做せるほどだった。
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